映画_彼女の権利、彼らの決断 Reversing ROE
https://www.youtube.com/watch?v=ihN7DR1Ce6g
米国で人工妊娠中絶を認めた"ロウ対ウェイド判決"を覆そうとする過去数十年にわたる政治運動を、中絶支持派や反対派へのインタビューとともに振り返る。
ちょっとした事情あり、アメリカ政治について勉強を深めたいと思っていたので見た。(正直なところ、そうでもなければ見なかったと思う)
ネットフリックスには良いドキュメンタリーが多い。それなりの本数を見てきたが、その中でも本作はかなり良かった。良かったというのは、知らない世界に目を開かせてくれた、という意味で。
リベラル化が進んでいる世界において、それを先導するのが米国であるとは思うが、トピックによってはこういう一面もある、という学びを得た。
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1960年代まで、アメリカでは人工妊娠中絶は違法だった。違法状態でもニーズはある。結果、地下に潜り、危険な中絶が多かった。特に社会的弱者である有色人種の女性は苦労していた。
なぜ「違法」なのか?との戦いが始まった
自分の身体について(医者と話して、女性である)自分で決める、人権の一部
この当時は共和党(例えば、カリフォルニア州時代のレーガン)も人工中絶を支持していた(個人の自由を重んじる党だった)
しかし、ある時から、共和党は「道徳(モラル)」の党になったらしい
カトリック教会は反対
昔は党派問題ではなく、医療問題・社会問題だったがある時から当派問題化していく
ROE v WADEの最高裁判決は、7対2で合法と判定(人生を決定する権利は個人にある。宗教や政府ではない)
匿名のリチャード・ロー?からきている名前。映画のタイトルは Lawの意もかけていると推測 福音派も中絶反対問題に参戦 オペレーション・レスキューとしてカンザス州ウィチタに戦力集中
中絶クリニックの前で集会、更には医師を殺人者呼ばわりして襲撃して殺害する例も
中絶問題は極めて感情を刺激する問題。
殺人、胎児殺害、大量虐殺、、と言えてしまう
共和党の中の知恵者が意図的に中絶問題を政治問題に仕立てた。福音派有権者を政治に引き込むため。宗教右派は課税を逃れ影響力を増すために、感情論になりやすい中絶問題を利用した
実際、レーガンはこの白人集団の支持を得て勝利
レーガン時代、パパ・ブッシュ時代にも、最高裁のロウ判決は覆される瀬戸際にあった
クリントンがリベラル派を任命して巻き返し
保守派は妊娠後期の中絶を問題だ、残虐だ、として攻撃。ここに焦点を合わせた。
部分中絶は違法化。RBGは激怒。
テキサス州での抵抗のためのフィリバスターのシーンは感動的
トランプも選挙の際に福音派の支持を固めるためか、pro-life発言をし、判事を指名→現状へ(5票は確実)
最高裁判決は覆され、判断の権限は州に帰り、いくつかの州では中絶手術は禁止されるであろうことが予想されてこの作品は終わっている
途中に登場する中絶手術を請け負う(信念ある)医師たち。特に保守的な州でこれに取り組むのは頭が下がる。
反対派は医師を標的に定めている。手術を請け負う技術と意思のある医師がいなくなれば、どれだけ手術賛成派が政治運動しても中絶手術は行われない
反対派はとにかく戦略的。弱い部分を見つけて、とにかくそこに集中して橋頭堡を作る戦略は圧巻といえば圧巻なのだが、その知謀と執念を別のことに向けてくれてもいいと思う
2022/5/5